そう、大事なことは今を生きること。 旅を覚悟した、アメリカ最後の出会い。
そう、アメリカでは自転車はバスにも乗れちゃうし電車にも乗れちゃうのだ!!しかも追加料金無し!

こんな感じ。
ちなみに電車内にはトイレやコンセントまであって快適。
でも車社会なので通勤時間でもガラガラ。本数は1時間1本くらいやし、駅と駅が数十キロと使い勝手が良くない。

100km近い距離を移動し、L.Aの中心の駅に着く。
ちなみにこの駅舎は映画の撮影にもよく使われていて、Catch me if you canでレオ様が詐欺る銀行はここを使ったらしい。
久しぶりの自転車でヒィヒィ言いながらL.A中心地から離れ、海岸沿いを走る。
アメリカ西海岸沿いにはサイクルロードが整備されていて、前後左右のどこかに常にサイクリストがいるような状態。
からっとしたカリフォルニアのビーチ沿いの道をみんな笑顔で声掛け合いながら走ってる。
みんな笑顔で、スピードの速い遅いに関係なく(ドロップハンドルが逆になってても気にしない)、それぞれのスタイルで楽しんでる。こんないい所やったらすげー強いレーサーがばんばん生まれそうやけど残念なことに、乗ってる自転車はTREKとSPECIALAIZEDばっかり。そこまでアメリカにこだわるなんてもったいない!
車道にはバイクレーンがあるし、ヘルメットも義務化されてたりするし、環境は最高。 アメリカがロードレース後進国なんて呼ばれてたのはもはや過去。 日本もがんばってほしいね~

重そうな荷物でえっちらおっちら走ってると、抜き去っていくサイクリストが話しかけてくる。この彼は、
「ほんと君がうらやましい!俺の分まで楽しんでくれ! うらやましい!あぁうらましい!ウラヤマシスー!!」
と、ひとしきり羨ましがった後、困ったら連絡してくるようにと連絡先とメッセージをくれた。
他にも、何度も抜きつ抜かれつした87歳のおじいちゃんや、坂道でも息を切らさずしゃべり続ける80歳のおばあちゃん。
ロード15台くらいのチームに追い抜かれたときは、代わる代わる世界一周計画を5回続けても話すはめに(笑)

海岸沿いの見晴らしいのいいところで休憩してると自転車の日の丸国旗を見て日本人が話しかけてきた。
娘さんがすぐ近くの保育園で日本語を教えていて、両親が日本から遊びに来ているらしく、昼飯前のぼくらにジャコと竹の子入りのおにぎり、チョコのお菓子、亀田製菓などなどいろいろ持たせてくれ、激励してくれた!
日本人は同じアジアの韓国・中国人と違って同胞意識が弱く、海外で出会っても話しかけたり助け合う意識が弱い(・・と思う。)
自分からはできるだけ話しかけていくようにしてるけど、こうして話しかけてくれるとほんと嬉しい。暖かい人たちでした。ありがとうございました!

いい出会いをして気持ちよくツールドフランスごっこしてると、突然目の前にゲートが。
制服着てて銃持ってるし、なんや物々しい。 顔も怖いし。
聞いてみると、なんと海軍基地。どっかで道間違ってもたと思いきや、サイクリングロードが基地の中を通ってるらしい。
さすがに戦車は無かったけど、装甲車や腕立てしまくってる人らがおって、軍マニアにはたまらん感じ。

1時間かかって基地を出るとお次は飛行場の近くを通る。
金網を挟んで数十mで滑走路。着陸する飛行機の真下からあんなとこやそんなとこまで全部マル見えの恥ずかしい状態な近さ。これまた飛行機マニアにはたまらん。任ちゃん!

雨の降らないカリフォルニアでは毎日この夕焼けが見れる。
走り疲れて眠るのはもちろんビーチ!
といってもビーチエリアでのキャンピングは違法なので、ちょっと離れた空き地とかトイレの裏でテントを張らず、マットと寝袋だけで寝る。今夜のBGMは波の音。

ところどころ海に突き出した桟橋があって、バーやレストランがあったり釣りをする人たちで賑わってる。
その先端で休憩してると、ボロボロの釣り道具を置いてレンタル屋?のようなことをしてるトーマスと話が弾み、その友人ドロシーも一緒になってビールをご馳走になることに。
好奇心旺盛で冗談ばっかり言ってるけど、落ち着いた雰囲気のトーマスと、旅の話一つ一つにアンビリバボーと驚き、ちょっと汚い言葉を使うおちゃめなドロシー。
ビールで乾杯し旅の話やバカな話で盛り上がってると、ドロシーがトイレに席を立った。
するとトーマスが顔を寄せ、「ひとつ話しておくことがある」と真剣な顔。とって置きの冗談かと顔を近づけると、
「ドロシーは病気で、あと数ヶ月の命なんだ」
はじめ英語を聞き間違ったかと思ったけど、頭の中で反芻して何回考えても、間違いじゃない。
「でも今のドロシーはすごい楽しそうに見えるのに!」
「そう、だから、今ドロシーは幸せに生きてるんだ」
言葉が見つからず混乱しているところに「何の計画を練ってるのよ?」と、ドロシーが陽気に帰ってきた。
何も無かったようにバカ話に戻ったけど、何も無かったように装う息苦しい時間・・。
今聞いた話が冗談のようやけど、それには何のメリットもないし、トーマスがそれをぼくに話したことにもメリットは無い。
酔っ払って頭がボーっとしてきて悪い夢を見てるような気分・・・
大統領も神様も大嫌い!と明るく笑うドロシー。ドロシーにもトーマスにも変わったところはない。
よく見てみると、出会った時から感じていた違和感。 口の周りだけが異様に乾燥していて、そこだけ目を引く。
一時間ほど楽しくすごし、そろそろキャンプ場を探さないといけないので、お開きにして店を出る。
トーマスは桟橋の先端に戻り、ドロシーは家に帰るからここでお別れという。
ふいにドロシーが寂しげになり、言葉に詰まる。 そしてふいに、
「あと2ヶ月で私は神様に連れて行かれるの・・。
私は死んだら海になりたい。だからいつでもそうなれるよう、こうして毎日ここに来てるの。
今日あなた達と出会えて本当に楽しかった。いい思い出になったわ」
死と向き合わされ、それを受け入れ、ポジティブに毎日を送ろうとする彼女。
その彼女にぼくが語った、旅が始まってのたった3ヵ月は、永遠より長い。
もうさっきまでの明るく悪態をつくドロシーではなくなっていた。
このドロシーのことをずっと忘れないと思った。
「これから、海を見るたびにドロシーのことを思い出すよ」
そう言うとみるみるうちにドロシーに涙があふれ、隠すように強くハグしてきた。
ぼくの耳元でそっと何かをささやいたけど、聞きとれなかった。それはもう言葉でなかったのかもしれない。
これが永遠の別れのようで、もちろん本当の意味での永遠の別れやけど、このまま離してしまってはいけないような衝動に駆られ、今度はぼくから何度も強くハグした。
「ありがとう、これからの旅、気をつけてね」
それだけ言うと、クルリと後ろを向きゆっくり歩き出したドロシー
これで終わりにしたくない! ぼくに出来ることは?今できることは??
「I love you Dorothy!!」
叫んだぼくに片手を上げ、ドロシーは振り返ることなく、ふらふらと去っていった。
桟橋先端のトーマスのところに戻ると、彼も無口になっていて、椅子にもたれて海を見ているのか居眠りをしているのか、西日が逆光になって表情は読み取れない。
それが何だか立ち去りがたくて竿を借りて少し釣りをしてみたけど、小さい魚が1匹釣れただけで陽はさっさと海に沈み、ぼくたちもそこを離れることにした。

トーマスは毎日朝6時から夜9時までここにいる。
観光客や地元民と話し、こうして海を眺めてきたし、これからもここで年を重ねていくのだろう。
彼にとってはぼくもドロシーも、たくさんの人と出会い、別れる中のひとり。
トーマスの人生を想像することはまったくできなかった。 ドロシーもまた。
でも、これだけは確か、
そう近くない将来、ドロシーはここで海になる。

話し足りなすぎて、次の日またあの桟橋に戻ろうかとも考えたけど、やっぱりぼくは先へ進もうと思う。
あの時ドロシーが耳元でささやいたのは、そういう事だったんじゃないかと今は思っている。
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| | 2009/11/30 07:47 | |